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月イチ開く「えほんとおうち」
府中街道沿い川崎市多摩消防署の隣にある注文住宅専門の工務店「タマック」内で毎月第一火曜日に開かれる「えほんとおうち」。絵本好きが集まって絵本を持ち寄り、読み聞かせや工作など思い思いに楽しむ空間。2019年1月にスタートし、今年(2025年)で7周年を迎えます。
「タマック」内にあるショールームが「おうち」になり、靴を脱いで入るとたくさんの「えほん」が迎えてくれます。
(取材日 2025年1月7日 レポーター 清水まゆみ)
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絵本に出てくる登場人物に仮装して楽しむ「BOOK WEEK」
「えほんとおうち」を中心となって運営するのは代表のスミナツコさん。多摩区で生まれ育ち、グラフィックデザイナーの仕事をしながら、まちづくりや地域のイベントに関わる子育てママ。「私、今も多摩区に住んでいるんです」と笑顔で話します。
「『えほんとおうち』を開いたくきっかけは、海外で行われているBOOK WEEKという絵本イベントとの出会いです。日本では、毎年10月27日から11月9日が読書週間として学生さんに読書感想文の課題がでたり、公共図書館での読み聞かせやおはなし会などがあったりますが、この時期に海外では(オ―ストラリア、イギリスなど)BOOK WEEKとして、好きな絵本のキャラクターの仮装をし、その本をもって学校に行くなどして絵本を楽しむイベントが開かれていることを知ったのです。」
「日本でもやってみたくて2017年に仲間と一緒にBOOK WEEK JAPANとして活動を始めたんです。多摩川の河川敷に『絵本とパーティ』として好きな絵本の仮装をして子どもたちと集まったりしたんです。とっても楽しくて今も場所を考えながら年に2回開催していますよ」とスミさん。
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月イチの「居場所」が「えほんとおうち」
「絵本とパーティ」を続けながら、「日常の中に絵本に親しめる場所が欲しい」の思いで生まれたのがこの月イチの「えほんとおうち」です。第一火曜日の10時から14時、「おうち」の中にスタッフが自分でたてたテーマに関する絵本を並べています。参加者は「これ、見て、見て」とおすすめ絵本をもってきてもOK! 持ち寄り本を楽しむ絵本サロンに変身します。
子どもの成長を共に見つめながら、絵本を真ん中においておしゃべりを楽しむ息抜きの空間が生まれているのです。3人の子どもがいる安達裕香さん(トップ画像前列右)は「学校が休みの日は、子どもたちも喜んでついてくるし、私自身も月に1回本当にリフレッシュできる時間なんです」と、ここに通う理由を明かしてくれました。子どもたちは、絵本に触れるのはもちろん、簡単な工作をしたり、絵を描いたり、それぞれがやりたいことを自由に楽しみ、お母さんたちはその姿をやさしく見守りおしゃべりも楽しんでいます。
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子どもたちはテーブルで絵を描いたり、工作を楽しむ。
わらべうた、紙芝居を読む…大人も楽しむ時間
わらべうたの世界を伝えたい参加者が歌いながら、手遊びをするミニステージは子どもたちも飛び入りで参加して盛り上がります。自分で作った紙芝居を披露する人がいたり、スミさん自らも絵本を読みきかせたりします。まさに大人も一緒に楽しむ時間が流れていきます。
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「白いハコ」のシェア本棚はこの活動がきっかけで生まれた
「えほんとおうち」の最寄り駅は小田急線の向ヶ丘遊園駅。今、まさに再開発の真っ最中の地域です。残念ながら2024年12月でクローズになってしまった駅前のコミュニティスペース「白いハコ」の中には、メンバーがおすすめの本を並べるシェア本棚、通称「駅前本棚」がありましたが、その立ち上げにスミさんも関わりました。「ここを続けていたことがシェア本棚につながりました。今は、フロアの廊下に本棚はお引越しているんです」と話してくださいました。
再開発が進むまちだから絵本を囲んでみんながほっとできる居場所を
スミさんは、「毎日の生活に絵本がある幸せをここで感じ続けて、気がついたら今年で7周年を迎えることになりました。コツコツ続けてきてよかったです」と読み聞かせを終えちょっとホッとした表情で話してくれました。
「その時にできることをみんなで考えながら力を合わせて実現し、続けていく。人もまちも変化する中で本をよりどころにするまちづくりを続けていきたいです。どなたでもここは参加できます。お待ちしています」と凛として締めくくってくれました。
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えほんとおうち
https://www.instagram.com/bookweekjapan/?__pwa=1#
開室:第一火曜日 10時~14時
場所:神奈川県川崎市多摩区枡形2-6-11 タマック内