(Zoom)インタビュー 自然堂(じねんどう) 代表:石田和之さん ~誰もが安心して働き、暮らせるコミュニティづくりにチャレンジ~
この記事は、2022年3月1日に協働・連携ポータルサイト「つなぐっどKAWASAKI」で公開されていたものを転載したものです。
昔ながらの里山暮らしのように、人と自然、人と人とのつながりを取り戻し、資源を無駄なく循環させ、障がいのある・なしに拘わらず、お互いを支え合いながら働ける、安心で心地よい暮らしを実現したい。
麻生区上麻生にある自然堂(じねんどう)ではこのようなコミュニティ作りを目指す活動が続けられています。
自然堂を運営する一般社団法人働くしあわせプロジェクト 代表理事石田和之さんにお話しを伺いました。
(取材日:2022年2月1日)
いつから、どのような経緯で活動を始めたのでしょう
2012年に法人を設立し障害福祉サービス事業所を開業し、主に精神疾患のある方たちを対象として社会適応訓練を提供してきました。
一般就労に送り出すだけでなく、目に見えない症状を可視化する「セルフケアシート」を開発したり、「K-STEPプロジェクト」を地域に普及させるなど、就労支援機関としてそれなりの役割を果たすことができたと考えています。
その一方で、彼らが感じている「生きにくさ」は、彼ら特有のものではなく、私たちの中にもあるということ。やがて、その原因は今の社会にあるのではないかという感覚が強まっていきました。
本来の自分とは違う、でも、今の社会を生き抜くには必要な姿。
それを続けていくうちに、本来の姿からどんどん遠ざかっていく自分。
私たちを含め、今の社会に「生きにくさ」を感じている方たちと一緒に、自分たちが理想とする暮らしや働く場を共につくり、“ありのままの自分”で生きられるコミュニティをつくりたい。そんな思いに駆られました。
しかし、これを公的な支援制度の枠組みの中で実現することは難しく、2020年度末で「自立訓練事業所 柿生の家 JINEN-DO」の事業を廃業し、現在の活動内容を実施するようになりました。
現在はどのような活動をしていますか?
自然堂ではさまざまなサークル活動を行っています。
「草花木果(そうかもっか)」というサークルでは、丁寧に土作りした畑で作物を作り、収穫や加工をしています。季節に応じて草木染め等も行っています。
「かまどの会」は自然堂の庭で、皆の“やりたいこと”やアイディアを生かした野外クッキング。「夕方kitchen」は皆で作った料理を分けて持ち帰り、これにて自宅の夕食できあがり!というサークルです。
暮らしの手仕事を楽しむ「ちくちくの会」は、繕い物屋さんも始めました。
この他、地元産の竹を使って日用品を作る「柿生竹細工部」、皆で歌い、音楽を通じて調和を楽しみ自分を表現する「歌のあるくらし」、こどもも おとなも 笑い合えるコミュニティを目指してみんなで考える「コトナ企画室」等のサークル活動があります。
また、メンバーによるヨガやアロマの講座、「ベビー&キッズシッター講座」も行っています。
梅しごとやお餅つきなど一人でやると大変な季節行事も、仲間とやることで会話がはずむ豊かな時間になっています。
これまでの活動を振り返ってみて、どのように感じていますか?
例えば、竹細工講座に参加したメンバーが、竹かご編みの講師を務めるようになりました。
また、草木染め教室で学んだことを、地域保育園の体験授業として提供することができました。
ほんの少しずつですが、これまでの「提供され、消費するだけの立場」から、「必要なものを創り出し、提供する」側へと育っていくことができました。
このような体験が、つくる喜びとともに、それぞれの自信につながっていくのだと、これは障がいのある・なしに拘わらず全く同じだと、しみじみ実感しています。
自己表現の場づくりは多種多様かと思うのですが、費用面はどのようにやりくりされているのでしょうか。
現在の活動に対して、寄付、参加費、会費収入をいただいています。また講座などを開催した場合には会場費を支払ってもらいます。けれど、これらだけでは、活動を支えるだけの財源に育っていません。
来年度も活動を継続できるように、助成金申請やクラウドファンディング、会費収入の見直し等、進めているところです。
これからの展望、また課題は?
「地域との共育ち」、すなわち、近隣にお住まいのより多様な団体などに自然堂の活動に参加してもらい、自然堂を地域の寄り合い所のような場所“ごちゃまぜコミュニティ”に発展させていきたいですね。
そうすることが、サークル活動やメンバーそれぞれの生業を育てること、ひいては、拠点を支えるだけの収入を得ることにつながっていくと考えています。
まだ地域へのPRが十分できていないので、もっと気軽に自然堂に立ち寄っていただけるようになりたいと、仲間とともに準備を進めています。
また、「多世代の多様な人と地域ぐるみで子育てしたい」というのが、自然堂に集うお母さんたちの願いです。親子木工教室、作品展示会等を展開することで、父親層や中高生たちにも参画してもらおうと計画しています。
彼らと一緒に家屋の補修や木工を楽しんでいる間、子育て経験のあるシルバー世代が乳幼児の面倒をみて、母親たちがシェアキッチンでご飯をつくるような、みんなの居場所になりたいと考えています。
問い合わせ先
自然堂
神奈川県 川崎市麻生区上麻生5丁目10‐11
問合せ:044-819-8491
http://www.hatarakushiawase.net