「武蔵野手打ちうどん塾」手打ちうどん作りに挑戦しよう!
「古来より武蔵野台地で伝えられてきたうどんを自分で作ってみませんか?」このように呼びかけられた「手打ちうどん塾」(主催:武蔵野手打ちうどん保存普及会 川崎)が、市立高津高等学校で開講されました。
手打ちうどん塾とは
10月から3月までに5回の連続講座(4回の実習と食べ歩き1回)が開催され、手打ちうどんの作り方や武蔵野手打ちうどんの特徴などを学びます。また、団体の活動や、設立のきっかけについての説明もあります。
参加者は20名で、午前・午後それぞれ10人のグループに別れます。各回およそ10人のベテランスタッフたちが丁寧に指導してくれます。
うどん作り名人をめざして!
5回講座の第1回目(午後の部)を取材させていただきました。子ども2名を含む10名の参加者は、そろいのエプロン姿のスタッフから作り方の説明を聞いて早速うどん作りに挑戦です。
粉に塩水を加えて混ぜ、生地を作っていきます。生地をこねたり、丸めたり、それをビニールに挟んで足で踏んで伸ばしたりを繰り返します。こねるときの水加減が、なかなか難しそうでした。
「踏むとき、片足でつぶしてから両足でグルグル回りながら踏むと上手くいくよ」「ビニールで包むときは、空気が入らないようにぴったり包んでくださいね」など、スタッフから声がかかります。
その生地を丸めてビニールに包んで30分~1時間ほど寝かせます。寝かせている間に、次の手順の説明を聞いたり、実演を見たりします。その後、もう一度丸めて踏んだら、いよいよのし板に乗せて麺棒で薄く伸ばします。
「麺棒の真ん中に両手を置いて、左右に押し広げるようにしながら伸ばしていってくださいね」
小学校2年生の男の子がとても上手に麺棒で伸ばしていたので注目していると、
「息子は前に一度参加したことがあって、私より先輩なんですよ」と一緒に参加しているお父さんが説明してくれました。
伸ばした生地を屏風のようにたたんで、大きな包丁で細く切って、出来上がりです。およそ2時間半、皆さん無事に武蔵野手打ちうどんを作り上げることができました。出来上がった生麵は、ニコニコ顔で各自持ち帰ります。
会長、副会長に団体について聞きました
「武蔵野手打ちうどん保存普及会 川崎」はどのように誕生し、どのように歩んできたのでしょうか。会長の北條秀衛(ほうじょうひでえ)さん、副会長の中野敏雄(なかのとしお)さんからお話を伺いました。
◎活動の始まりは小平市
私どもの会は、川崎で武蔵野手打ちうどんの技術の保存と普及することを目的としています。2000年11月に中原市民館で発会式を行ったのです。その時の会員は60人でした。
けれど、いきなり始めたのではなくて、その前段階があります。
実は武蔵野うどん保存普及会の発祥の地は小平市なのです。
小平市で國學院大学教授だった加藤有次(かとうゆうじ)先生が既に武蔵野手打ちうどん保存普及会を設立しておられました。先生は民俗学の権威ですが、うどん博士とも呼ばれており、当時川崎市市民ミュージアム館長も務めておられました。その時事務局長をしていた私も加藤先生のうどん塾に参加しておりました。やがて川崎でもやってみよう、と言うことになったのです。
◎主な活動は、年4回の実習講座と食べ歩き
活動の基本としては、年に4回の実習講座開催と手打ちうどんの食べ歩きを行っています。この他、要請に応じて出張講座を行います。
今年度は7月に岡上こども文化センターで出張講座を実施しました。
「この前よりうまくできたと思います。少しコツをつかめたので、また参加してもっとじょうずになりたいです」とこんな感想を沢山いただきました。
10月21日には中原小学校の「寺子屋なかはら」で実施する予定です。出張講座は子ども対象とは限らず、市内の団体から毎年数回の要請をいただいております。
実習の他に食べ歩きも続けていますが、これがなかなか楽しいし勉強になるのです。
近県の美味しい手打ちうどんの店に皆で行って試食し、比較したり学んだりして、食文化研究を行っています。
うどんというのは、打ち方はあまり変わらないのですが、使っている粉は店によって様々です。それによって味や食感ももちろん違ってきます。
私どもは地元で収穫される“農林61号”という粉を使っています。独特の弾力と強いコシが特長で、この粉を使うことが本物の武蔵野手打ちうどんの条件です。
◎小麦などの作物も育てている
また、栗平に農園を借りており、小麦やその他の作物を育てています。5月の麦刈りから脱穀、小麦の洗浄、日干し、そして11月には麦まきなどを行っています。他にも、カボチャやスイカ、サツマイモ等も育てていますよ。
近年はコロナのため開催できないこともありましたが、それよりもむしろ異常気象に困っております。猛暑が続くし、秋は短いし、冬はあまり寒くならないし、雨が少ない。もちろん作物にも影響があらわれます。雨が降らない日が続くとせっせと畑に水やりに通いました。これはもう、農業の危機、小麦の危機、手打ちうどんの危機、そして人間存在の危機ですよ。けれど、こんな気候でも雑草は元気よく生えてくるんですよ。すごいですね。我々もコロナに負けず、雑草のようにたくましく暮らしていきたいと思っています。
スタッフにも聞いてみました
会を維持、継続するには欠かせないスタッフにも感想をお尋ねしました。
「参加して10年ほどになります。美味しくて病みつきです。自宅でも打っていますが、家族にも好評です」
「家族にも喜ばれるし、自分自身も楽しいから続けられるんですね」
取材に伺ってみると、スタッフも参加者も男性が過半数だったのは、予想外でした。こねたり伸ばしたりする作業にも熱がはいって、楽しそうな参加者たち。
「もちろん家でも作るつもりですし、これからも続けますよ」と。
どうやら皆さん“手打ちうどん道”を究めるおつもりらしいと拝察した次第です。
楽しく続けられるのは継続の大きな原動力ですね。
武蔵野手打ちうどん保存普及会 川崎の今後の発展が楽しみです。
団体について
武蔵野手打ちうどん保存普及会 川崎
事務局:090-1427-7260(村田)
メール:hidee27@outlook.jp
ホームページ:http://musashinoudon.dokkoisho.com/index.html
(取材日:2023年10月8日 レポーター:山田知子)