~世のため、人のためという生き方~ 日本を代表する化学者 藤嶋 昭氏 独占インタビュー
この記事は、2021年3月16日に協働・連携ポータルサイト「つなぐっどKAWASAKI」で公開されていたものを転載したものです。
2017年文化勲章受章。2018年川崎市名誉市民。光触媒を発見しその名が世界に轟く藤嶋昭氏(東京理科大学栄誉教授・光触媒国際研究センター長、中原区在住)は、長年、幼児から高齢者まで幅広い年齢層を対象とした出前授業に力を注いでいらっしゃいます。
ご多忙とは知りながら取材をお願いしたところ、快く引き受けてくださいましたので、早速お話を伺ってきました。
(取材日:2021年3月7日)
出前授業を精力的に取り組んでいらっしゃいますが、いつ頃から始められたのですか?
出前授業に取り組み始めたのは大学生の時です。福井、島根、青森等の小学校で、夏休みの特別授業として理科の楽しさを伝えて回りました。それが出前授業の始まりです。
コロナの影響で最近は回数が減りましたが、コロナが流行る前は年に100回ほどの授業を行っていました。全国どこへでも行っています。
どのような人を対象に出前授業を行っておられますか?
幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学、一般、それに先生方の集まり、社員研修、外国からの団体など様々なところから呼ばれます。幼児が対象の時は親子参加のことが多いです。
外国からは優秀な方々が来られますし、皆さんものすごく熱心ですね。
今、かわさき市民アカデミーでオンライン講座(無料)を実施しています。私の講座もやっています。あのような形式も、一種の出前授業ですね。
具体的には、どのような内容の授業でしょうか。
私の専門の光触媒に限らずいろいろな話をします。身近なことから問いかけて、時には実験もします。実験をすると、小さな子どもでも楽しみながら納得して理解してもらえます。
光触媒の話では、光をあてると、いろいろな物が綺麗になるとか、鏡が曇らなくなる実験をやりますと、理解していただけますよ。
・空は何故青いのでしょう
・雲は何故白いのでしょう
・北極や南極は何故寒いのでしょう
・一般に物質は、気体・液体・固体の順に重くなりますが、氷は何故水に浮くのでしょう
・風は何故吹くのでしょう
こんな質問からスタートすると、皆、面白がって科学を身近に感じてくれます。
質問の答えは自分で考えてみてくださいね。
出前授業での嬉しい思い出など、教えてください。
質問を沢山してくれると嬉しいです。何にでも興味を持って欲しいので、どんな質問でも嬉しいものです。
「山は平地より高くて太陽に近いのに、山の上の方が気温が低いのは何故ですか」って質問されたことがありました。いい質問だったなと、印象に残っています。
私が出前授業に力を入れるのは、「理科離れをいかに防ぐか」が一番の目標です。
日本は資源もない、土地もない。だから科学技術でやっていくしかない。一人でも多くの人に理科を好きになって欲しいのです。
感想文で「理科が好きになった」など頂くと嬉しいですね。
無人島に1冊だけ本を持って行くとしたら、どんな本を持って行きますか?
沢山好きな本があるので、難しいですねえ。論語も好きだし、偉人の伝記なども好きだし。
でも、1冊を選ぶなら『聖書』ですね。
藤嶋昭氏について
東京大学大学院に在学中の1967年春、水溶液中の酸化チタン電極に強い光を当てたところ、酸化チタン表面で光触媒反応が起きることを発見。この現象は共同研究者の本多健一さんの名前と合わせ「本多-藤嶋効果」と呼ばれる。それらの業績が認められ、2004年に日本国際賞を受賞している。
東京大学教授の後、2013年4月に東京理科大学光触媒国際研究センターを開設しセンター長にも就任、同センターにより光触媒の多様な応用展開を実現。また、現在もインフルエンザやコロナウィルスの撲滅装置の製品を完成させるなど、様々な研究を実践し続けている。
【栄誉・叙勲】
2003年 紫綬褒章
2004年 産学官連携功労者表彰内閣総理大臣賞/川崎市民栄誉賞
2006年 神奈川文化賞
2010年 川崎市文化賞/文化功労者
2017年 文化勲章
2018年 川崎市名誉市民