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戦争の悲惨さ、平和の尊さを次世代に繋ぐ「平和を願う会」

この記事は、2022年10月18日に協働・連携ポータルサイト「つなぐっどKAWASAKI」で公開されていたものを転載したものです。

(取材日:2022年8月11日・9月10日)


被爆体験を語り継ぐ

戦争体験のない世代に、平和の尊さを伝えたいという思いで活動をしている「平和を願う会」。2017年(平成29年)4月に発足以来、川崎市内を拠点に、講演会や朗読劇で戦争の悲惨さや愚かさ、核兵器の脅威を次世代の若者に語り伝えています。

共同代表のひとり、「川崎市折鶴の会」会長でもある森政忠雄さん(89)は、小学6年生11歳のときに広島で被爆。その体験を語り継ぐ「語り部」として活動を続けています。共同代表で発起人の萩坂心一さん(65)は、戦争や被爆体験、福島原発事故などをテーマにした朗読劇を上演しています。

講演をされる森政さん

終戦記念日前後に毎年平和をテーマにした集いを開催

2022年8月11日、麻生区にある麻生市民交流館やまゆりで「平和へのバトン」~第5回 平和を願い、実現するための集い~が開催されました。被爆体験者による2つの講演と朗読劇で構成されたイベントには、小学5年生から80代の年配者まで、さまざまな年代の方が参加されました。

1つ目の講演は「孫世代に伝える被爆体験」。森政さんが「語り部」となったいきさつ、体験された原爆の悲惨さ、戦争のむごさを語られ、なぜ戦争が起きるのかを参加者にも問いかけました。

2つ目の講演は、長崎の被爆者である中釜眞姝子(なかがま ますこ)さんの「長崎原爆 その日とその後」。2歳で被爆された中釜さんは、家族の話や父親の手記をスライドにまとめて語られました。

講演会のあとには、戦争体験者と来場した若者との意見交流会が行われました。参加された戦争体験者から、戦時中の悲惨なできごとが語られるとともに、今現在も地球上に起こっている紛争を憂い、どうにかできないものかと、平和を祈る言葉も発せられました。

2歳で被爆された中釜さん

被爆者の思いを朗読劇に

同日に上演された朗読劇『あの夏の記憶』は、書籍「折りづるの証言」に掲載された和久井和子さんの手記を、朗読グループ「読みがたり和音」の代表、萩原みどりさんが脚本に起こされ、演出されました。(出演:小脇貞子・林桃子・小林真央・志田徳雄・萩坂心一)。

原作は、1945年8月6日、広島市内の女学校の教室で被爆された和久井和子さん、当時16歳だった和子さんが投下日から11日まで書き留めた日記をもとに、「折りづるの証言」に投稿された手記です。白骨化した母親、建物疎開の現場で命を落とした弟、父親は仕事場で両腕と首に酷いやけどを負い、自らも下血しながら生き抜いた6日間。そして、その後の生活などを赤裸々に描かれた朗読劇です。

会場には、2018年に亡くなられた和子さんの息子、和久井一郎さんも参加され、母親の思い出とともに朗読劇の感想を伝えてくれました。息子さんのお話で、和子さんのことを身近に感じることができ、朗読劇の内容はフィクションではく、現実にあったことと捉えることができました。

一郎さんは、「毎年8月6日の朝は、母親の前に正座し、被爆体験を聞かされました。その頃は、早く終わらないかなあと思っていたが、今となっては貴重な機会でした」と率直に語ってくださいました。

「あの夏の記憶」16歳で被爆した少女の体験談を朗読劇に

平和な未来へと、思いを繋げていく

参加者のアンケートには、生の声と実体験を直接聞いたことへの感想が素直につづられていました。萩坂さんは「若い世代、子どもたちにバトンを手渡せた気がします。そのことが、何よりも嬉しく、これまでの苦労が全て報われました。開催して良かったです。」と語っています。

以下、原文そのままを引用させていただきます。

―――「戦争のひさんさを改めて実感しました。宿題をするために来ましたが、来て良かったと思いました」(中学2年生)
―――「何もしらなかったから、しれてふしぎな気もちになった。6年生で、せんそうについて学ぶらしいから、ならう前に、もっとくわしいことがきけて、どのようなかがわかった。これからも次につなげていきたい」(小学6年生)
―――「先の戦争における原爆のお話を直に聞き、本や教科書などで聞き及ぶより何倍もの恐ろしさとおぞましさを感じました。それとともに、自分たちのような若い世代が、この恐ろしさを次へとつないでいかなければならないのだと強く感じました」(大学2年生)
―――「森政さんのお話、50分でしたが、戦争が始まった原因、原爆が落とされたこと、よくまとめられてわかりやすかった。戦争体験を話される方が少なくなってきているなか、もっと多くの方に知ってもらうことが大事だと思います。毎年企画してほしい」(70代)

森政さんと萩坂さんは、「愛をバングディッシュの子どもたちに」「戦火のランナー」「伯父が残した17通の戦地からの葉書」「孫世代に伝える被爆体験」「長崎原爆その日とその後」「渇望郷」という6つのテーマで、戦争体験を聴く催し「PEACE ~戦争体験者の生の声から~」にも参加(9月10日に横浜市緑区のみどりアートパークで開催)。森政さんは講演で、萩坂さんは朗読劇で、それぞれの思いを伝えられました。

戦争が終わって77年。自らの体験を話すことができる人がいるうちに「戦争体験の継承」に取り組むことの大切さが、改めて問われています。「朗読劇」に感動した大学生から、劇の音声や台本の保存や提供についての問い合わせがあり、可能な範囲で協力することに。若い世代がお二人の思いをどのように受け継いでいくのかが楽しみです。

「平和を願う会」は、今後も毎年夏に「講演会と朗読劇」を開催し、平和な世界へと、思いを繋げていきます。

戦争の恐ろしさを子どもにも判る言葉で語る萩坂さん

<取材後記> 神奈川県弁護士会人権賞受賞!

共同代表の森政忠雄さんは、第27回神奈川県弁護士会人権賞を受賞されました。2022年11月3日(木祝)開催『第10回 人権シンポ in かながわ』において贈呈式が行われます。

受賞理由は、「川崎市折鶴の会」代表として、核兵器のない世界を目指した活動をされているほか、川崎市内外で学校や行政機関からの要請を受け、被爆体験の語り部活動をされてきたことです。

連絡先

平和を願う会 Tel.044-935-0313(萩坂)


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