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かわさき文芸朗読の会 朗読劇で客席と交流

この記事は、2022年3月6日に協働・連携ポータルサイト「つなぐっどKAWASAKI」で公開されていたものを転載したものです。

 かわさき文芸朗読の会が、6回目の朗読発表会を2022年3月21日に公演する。代表の宮澤富士夫さん(71)を含む10人の会員は作品の背景、著者の思いなどを共有し、来場者の心に染みる朗読劇に仕上げようと稽古に熱が入っている。
 今回の作品は「トカビの夜」(※1)(朱川秦人著)と「胡桃の部屋」(※2)(向田邦子著)。昨年10月に会員が持ち寄った候補の中から話し合い絞り込んだ。

 ※1トカビはいたずら好きな朝鮮のお化け。大阪の在日朝鮮人家族の次男チョンヒが周囲の差別感情の中で病死した。そのあとトカビになってナオユキに会いに来る。

 ※2「胡桃の部屋」では父が失踪したあと、家族の中で長女、桃子が家族を支えるために頑張っている。しかし、母にも弟にもそれぞれの思いと秘密があった。

小田健也氏(演出家)が指導

 共に大作であるオペラ「夕鶴」や「高野聖」を演出した小田健也氏が5年前まで指導していた。「夕鶴」は300回以上の公演をし、ヨーロッパ、中国への海外公演も行われた。泉鏡花の「高野聖」では、氏自らがオペラに仕立て、鏡花の生まれた金沢を皮切りに新国立劇場での公演まで導いた。その小田氏の薫陶を受けてきた会員たちが6回目の朗読劇を公演する。昨年10月以来、舞台での動き、立ち位置を考えながら5回の読み合わせを終え、8回の立ちけいこも仕上げに入っている。

読み合わせ練習

文芸朗読の会の活動

 「会の活動はとても文化的だ」。宮澤さんは知人に誘われて始めて足を運んだときにそう感じたという。「作品と作家のことをしっかりと調べて理解を深くしなさいよ」と小田氏から指導を受けてきた。活動は月に1回3時間。持ち寄った作品を読み合っている。

 向田邦子について、ある評論家は「向田は昭和の世相と家族の姿を思い続けてきた作家なのだ。作品中の失踪した父親が無学歴で頑張ってきた姿に、向田が見てきた実父の生きざまを書き込んでいる。そして長女として頑張る向田が作品に出ている。」という。

 第一回朗読劇(2017年)の作品「入れ札」(菊池寛著)に話題が及んだ。文芸春秋社を創立した菊池寛がある文学賞を選定する会議で見かけたシーンを主題にして、後日「入れ札」を著したという。信州路へ逃れる国定忠治に付き添う子分3人を選ぶ入れ札の場面だ。囲む子分は11人。一人、自分の名前を書いたが他に推す札がなかったその子分の羞恥や苦い悔悟、浅ましさなどを描いたと言われる。他の子分たちは『忠治にとってよい』と思う同輩の名を記したが自分はそうではなかった。作家は文中で忠治に言わせている「賭博(ばくち)は打っても、卑怯なことはするな。男らしくねえことはするな」。

 背景を知ることで作品に対する理解がいっそう深まり、短編が大きく膨らむ。

演出風景

客席の感動に励まされ

 朗読劇では「客席に起こる笑い、驚き、感激や涙などの反応が励みになり私たちの気持ちを揺さぶります」と宮澤さんはいう。
 吉村昭の作品「梅の蕾」の朗読劇を演じたときには客席にすすり泣く声が聞こえた。「おお!伝わっている」と実感した。そうした反応が朗読劇を今日まで続けている会員の励みになっている。
 会員は作品を読み合わせ、出し合った意見を共有する練習を積み上げている。そうすることで作品が観客の心に染み入るものになってほしいのだ。けれども「こう言う作品だ」とは押し付けない。受け止め方は人それぞれだから。

仲間と楽しむ朗読

 読書、朗読が好きだったり演劇が好きだったり、会員の参加の理由はさまざまだ。個人でも朗読会を開催しているメンバーの一人は今回、「トカビの夜」の演出を担当する。合唱団のメンバーでもある松本馨さんは発表会のたびに舞台監督を努めてきた。地域で読み聞かせ活動をする人。そして進行に合わせてピアノで盛り上げる朝岡真木子さんもいる。  
 宮澤さんは「小田先生引退の後、朗読劇を続けてこられたのは会員それぞれが協力し合い楽しんできたからです。一緒に何かをする仲間がいることは楽しい。今後も客席の期待を裏切らないように準備します。おいでいただいた方から文芸朗読の仲間が増えてくれたらこの上なくうれしいです」と話す。

タイミングをメモするピアノの朝岡さん

発表会情報

日時:2022年3月21日(月・春分の日) 14時から(開場:13時30分)
場所:てくのかわさきホール

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