見出し画像

『お~い!煙突男(ミスター・チムニー)よ 天空百三十尺の風』 ≪2022年度≫第8回川崎郷土・市民劇

この記事は、2022年6月8日に協働・連携ポータルサイト「つなぐっどKAWASAKI」で公開されていたものを転載したものです。

川崎の歴史や歴史上の人物を採り上げた創作劇を上演することで市民文化の向上をはかるとともに、町づくりを推進するという目的のもと、川崎郷土・市民劇は2006年に始まりました。毎回出演者は市民からの公募によって決定しています。
8回目となる今回は、1930年(昭和5年)に川崎の富士瓦斯(がす)紡績の工場(現在は川崎競馬場)で起きた労働争議を題材とする実話に基づいた作品です。
5月7、8日に多摩市民館、14、15日に川崎市立労働会館(サンピアンかわさき)で上演し、会場には、早くから開演を待つ人の長い列ができ、全日程ほぼ満席の盛況でした。
(取材日:2022年5月7日)


創作劇『お~い!煙突男(ミスター・チムニー)よ』とは?

昭和5年に紡績工場で労働争議が起こった時、高さ百三十尺(約40メートル)の煙突のてっぺんからビラをまき、演説して女性労働者の待遇改善を訴えた青年がいました。
煙突上での彼の籠城は6日間におよびましたが、その間、煙突の下には焼き鳥やおでんの屋台も現れ、連日一万人の市民が集まり声援を送ったそうです。国内はもちろん海外の新聞でも報道されました。また 1981年(昭和56年)には、NHKの歴史番組『歴史への招待』でも取り上げられました。
今回の舞台では、103歳を超える女性が女工時代の思い出を語るかたちで、昭和5年当時の情景と現在とを対比しながら場面が進みます。
そして観客は、次第に、当時の問題が現在の社会問題にも重なることに気づかされます。
煙突男の呼びかけは、過去と現在の双方に向けられているかのかもしれません。

公演のチラシ

この劇を作った人たちって、どんな人?

◆出演者やスタッフは・・・

今回の公演で主役の煙突男を演じたのは、市内のIT企業に勤めるサラリーマン。103歳の女性の女工時代を演じたのは19歳の大学生です。照明や大道具などのスタッフにはプロを迎え、質の高い舞台づくりを行っているとのことです。

◆作者 和田庸子さんは・・・

川崎・横浜など京浜工業地帯で活動を続けている地域演劇集団の京浜協同劇団に所属し、脚本を担当。NHKの歴史番組『歴史への招待』のアーカイブスを見て、「是非この話を演劇にしたい!」と思い、丁寧な取材を重ねて脚本を書き上げたそうです。

作者 和田庸子さんからのコメント

現在の川崎は、人々の努力の積み重ねでできあがってきました。
この煙突男の出来事は、川崎の産業の発展や、やがて始まる戦争への突入など、今日までの川崎を形づくってきた歴史の、大きな要素の一つです。
いつの時代であっても、たとえ一人一人の力は小さくても、皆が自分でできる方法で声を上げていけば、その声が集まって大きな力になることができます。
「声をあげよう!力を合わせよう!がんばろう!」煙突男は身を挺して私たちに伝えてくれたのではないでしょうか。
昔のことで知らない方も多いと思いますので、市民の皆さんに「町の記憶」として是非知っておいていただきたいですね。
そして、私たちも次の世代へとつないでいきたい、そう願っています。

作者 和田庸子さん

演出家 杉本孝司さん(東京芸術座)からのコメント

出演者はサラリーマンや学生など、多くが一般市民の方です。さらに新型コロナ対策で、全員で集まることを避けて分散稽古としたため、当初は皆がひとつの芝居を共有してまとまるということが難しかったですね。
登場人物の人間像を台本に基づきながら作っていくわけですが、それが現代の人にも共感してもらえる姿になって欲しい、と思っていました。それはとても難しかったけれど、ものすごく楽しかったです。

演出 杉本孝司さん

運営委員長 藤嶋とみ子さんからのコメント

私には、主人公の煙突男、田辺潔(たなべ きよし)が登場した時代は、現在の世情と共通するところがあるように思えるのです。戦争への不安や、職を失う不安、弱者の苦しみ……様々な点です。
この劇で主人公が守ろうとした女工さんたちの働きがあったからこそ川崎は産業都市として育つことができたのです。現在に至るまでに多くの労働者の力が川崎を支えてきたのです。
これまでの史実を知って、歴史の変遷を見て、将来に向けて今何が必要なのか、何をすべきなのか、そんなことを市民の皆さんに考えていただけたらと思います。

実行委員長 藤嶋とみ子さん

観客の感想を聞きました

「川崎郷土・市民劇の観劇は今回で8回目ですが、最も身近に感じた内容でした。「今」の時代も取り込みつつ、90年以上も前の事件を題材に、見事な人間ドラマに仕上がっていました。カーテンコールは感動的でした」(男性客)

「今の川崎らしさを表していて、脚本、演出が素敵でした。デイサービス送迎の場面から始まり、症状も性格も様々な高齢者、フィリピンやベトナムなど外国人の職員たちが登場し、実際に身近に起こっていることだと感じました。デイサービスの体操の場面では、大好きな曲が使われており、嬉しかったです」(女性客)

開場前から長蛇の列

【訃報】
このたび 『お~い!煙突男(ミスター・チムニー)よ 天空百三十尺の風』 作者 和田庸子様が 2022年5月26日にご逝去されました
ご冥福をお祈りし、謹んでお知らせいたします。

『お~い!煙突男(ミスター・チムニー)よ 天空百三十尺の風』
≪2022年度≫第8回川崎郷土・市民劇
問合せ:川崎郷土・市民劇実行委員会(川崎文化財団内) 電話:044-543-5012
紹介ページ:https://www.kbz.or.jp/event/citizentheater/20220507/
Facebook https://www.facebook.com/shimingeki


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

最後まで読んでくださりありがとうございます。市民の方の地域活動や市民活動等への参加と継続を応援するため、Facebook(つなぐっどKAWASAKI)でも情報を発信しています。よろしければ、フォロー、いいね!をお願いします♪