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市民劇団「劇団わが町」10年目のこれまで、そしてこれから

この記事は、2022年12月27日に協働・連携ポータルサイト「つなぐっどKAWASAKI」で公開されていたものを転載したものです。

2012年6月、新百合ヶ丘で生まれた市民劇団「劇団わが町」。誕生10周年を迎えた2022年春に、オーディションが行われました。現在は、80名以上の応募者から選ばれた9歳から81歳までの43名の劇団員が所属しています。

第1回目の旗揚げ公演で上演された作品は『わが町しんゆり』。記念すべき10年目となる第12回公演は、新たなメンバーを迎えて、この『わが町しんゆり』を再演。2022年12月2日から4日までの3日間開催され、全5回が満席となりました。

劇団のこれまで、そしてこれから目指していくことは? 芸術監督のふじたあさやさん(88)に聞きました。
(インタビュー 2022年11月21日)

ふじたあさやさん(演出家・劇作家)

新たにオーディションをされた理由はなんですか?

「劇団わが町」は、川崎市アートセンターの主催事業です。川崎市アートセンターは指定管理者制度で運営しており、指定管理者は5年ごとに交替するため、劇団も変わる必要があります。10年目の今年、2回目の若返りを図ったということです。

5年前に、はじめて若返りを図ったときには、それまでいた劇団員から「私たちを見放すのか」というような意見も出ましたが、劇団というのは、同じところに留まるものではありません。変わらなければ歳をとっていくだけです。やはりときどき若返りを図っていかなければなりません。

結成当初、一番若い子は4歳でした。その子は中学3年生になり、今年は受験でお休みしています。そういう「お休み」もありです。転勤するのでお休み、仕事が忙しいから裏方へ、そういうゆるやかな劇団でもあります。じゃないと長続きしません。
「これでいいや」という安心感みたいなものが、演劇には一番敵なのです。常に「次はどうしたらいいか」「自分はどう変わったらいいか」を考え続けているような、生き生きとした集団であって欲しいと思うのです。

演出について、思いを聞かせてください

演出家にも色々なタイプがいて「俺の言うとおりやれ」と、動作や言い方まで厳しく指導する人もいます。そういう演出家のほうが、尊敬されてきたという歴史があります。特に日本では伝統演劇が主流でしたから、やりかたを知っている人が偉い、そういう世界でした。そもそも「稽古」という言葉が、「いにしえを考える」という意味ですから、古いことを知っている人が強い。

でも、新しい作品を作るためには、自分で「どうしたらいいか」を考える力をもっているほうがいい。自分の目で他人を観察し、自分の頭で言葉の意味を探り、世の中を考えていくというふうになってくれるのが一番いい。こんなふうに台詞を言いなさい、とか言わないですむのが理想的です。

この劇団では、自分で考え「こうしたらどうだろう」ってどんどん試みていく人が育っています。それが力となるのですから、ここの劇団員はそうなって欲しいと思っています。もちろん、ときどきは、「そうじゃなくて、こうだろう」ってやっていますけど(笑)、ヒントを与えるのに留めようと思っています。

第12回公演、舞台稽古の様子

新たにメンバーが加わり、今までと違う何かがありますか?

あります。

「どうしたらいいのでしょうか?」って、こちらが言うことをただ待っているような人が減りました。自分で考えて、いろいろ提案できる人が増えてきている。これはもう劇団が若返るためには必要なことですし、私が望んでいる方向に少しずつ近づいて来たかな、という感じです。

前から劇団に居て、なんとなくやり方がわかっているつもりの人達が、少し慌てています。これは稽古を見ていてわかります。良い刺激になっています。若い人たちはちょっとヒントを与えるとたちまち動き出す。「あぁ、信頼してやれる」と人間関係が変わっていく。どんどん変わっていくのがわかります。そういう意味で、フレッシュな人が入ったことが、経験者に良い刺激となり、先輩達も新人に、自分たちの経験を的確に相手に渡していこうという、前向きな姿勢になっています。

一緒に芝居を作りながら、地域に新しい仲間や自分の居場所が家の近くにできる。芝居をする楽しさだけでなく、そういう良さを感じている劇団員が増えています。互いに刺激し合う場所、やりたいことをやっていい場所。劇団というのは、自分を剥かれちゃいますからね、嘘をついていられない。そういう意味では人を育てる場所なのです。

円陣を組み気合い注入<撮影:関口淳吉>

「劇団わが町」には、どういう特徴がありますか?

この劇団は「公的な立場」という側面もあります。川崎市アートセンターという公共施設の発信事業として成り立っている劇団。なので 公が「そこまでならやっていい」と認めるかどうか、それなりに気を遣っていかないと具合が悪い(笑)。ですから私自身、自分がやりたいことと、ここで実現したいことが必ずしも重なっているわけではなく、ここでの働き方というのがあります。そう言う意味では、ずっと悩み続けています。

状況はどんどん変化していきます。そのなかで、何をやったらいいのかというのは答えが見えているようで、まだ見えてはいない。ずっと探し続けていくのだと思います。

上演する作品を考える上でテーマとなるのは、地元の歴史や、この町の未来を考えるもの。著名な作品を選んでやりますというのではなく、ここの人達にとってどうなのか、ということを常にキーワードにして考えています。それが、作品を選ぶポイントです。

第12回公演「わが町しんゆり」チラシ

市民劇団である意義や意味を教えてください

私の父親(中央公論元編集長の藤田親昌)は、川崎市の教育委員、川崎文化財団理事、川崎市社会教育委員など多くの地域活動、ボランティア活動に取り組んでいたので、私も自分のできる分野で、花を咲かせてやろうという気持ちはあります。父親を知っている人が存命のうちは、まぁなんとかやっていけるかな(笑)。

ホールや文化施設などハコものを造れば、文化事業をやった気になっているところもありますが、川崎市はもう一歩先に行こうとしています。全国的に見ても川崎市は進んでいるように見えます。

新百合ヶ丘という地域性にも恵まれています。

川崎・しんゆり芸術祭「アルテリッカしんゆり」をはじめたとき、ここにはお客さんがこんなにいたのだ!という発見がありました。東京から人が居なくなるゴールデンウィークも、川崎のここには人が集まる、芸術祭ができちゃう。

「劇団わが町」もそういう地域的なメリットを活かし、みなさんの拠り所にしたい。やりたい人の拠り所であり、見たい人の拠り所として歩み続けたいと思っています。皆さんのお知恵を借り、「こういうのはどうですか」と意見も聞き、「自分たちのまちの劇団だ」と思ってくれる人にとっての劇団になりたいと思っています。
来年に向け、またいろいろ考えています。まだ発表段階ではありませんが、川崎の昔話を脚本にまとめるとか、地域の歴史的なエピソードを掘り下げてみるとか。死んでいる暇はありません(笑)。

1幕目のラストシーン<撮影:関口淳吉>

Topics<劇団員募集>
「劇団わが町」は2023年春に劇団員追加オーディションを開催。詳細は2023年2月に発表。

市民劇団「劇団わが町」情報

<公式ツイッター>
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<Instagram>
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問い合わせ先:川崎市アートセンター Tel.044-955-0107


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